請 求 の 趣 旨

1 被告木津川市長は、イレブンの会に対し金33万円、伸政会に対し金24万円、日本共産党木津川市議員団に対し金12万円、公明党に対し金6万円の返還を請求せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
 との判決を求める。



請 求 原 因

第1 当事者 
1 原告
  原告は、別紙当事者目録記載の住所地において、家族とともに生活している。
  2007年(平成19年)3月11日までは、旧木津町の町会議員、同年4月からは旧木津町、旧加茂町、旧山城町と合併して生まれた木津川市の市会議員の職にある。木津川市議会においては、いずれの会派にも所属していない。
2 被告
  被告木津川市長は、普通地方公共団体である木津川市の執行機関である。
3 市議会議員
  別紙木津川市議会議員目録記載の者は、原告と同じく2007年(平成19年)4月以降、原告と同じく木津川市議会議員の職にある。
  同目録記載1〜11の各議員は、木津川市議会において「イレブンの会」と称する会派を構成している。同目録12〜19の各議員は「伸政会」、同目録20〜23の各議員は「日本共産党木津川市議員団」、同目録24〜25の各議員は「公明党」と称する会派を、それぞれ構成している。
  なお、上記の各会派は、木津川市議会会派幹事会規程に基づいているとされる。

第2 政務調査費の交付
1 根拠条例の制定の経過
  上記の通り、木津川市は旧木津町などが合併して成立した普通地方公共団体であるところ、合併後の第1回目の議会が、2007年(平成19年)5月9〜10日に開催された。
  そこで、「木津川市議会政務調査費の交付に関する条例」(以下「本件条例」という)が制定された。
2 制定された条例の内容
  本件条例の概略は次の通りである。
@ 政務調査費を交付する対象
    会派及び会派に所属しない議員に交付する(2条)
A 交付方法
    年額交付とする(3条)
B 交付金額
   (ア)会派に対する政務調査費は、所属議員数に月額金1万円を乗じた金額を交付する(4条)
   (イ)無会派議員に対する政務調査費は、月額金7000円を交付する(5条)

3 政務調査費の交付
  本件条例に基づく政務調査費の交付申請期限は、5月31日とされており、同日までに上記の各会派とも、被告に対し、同申請を行っている。
  その結果、本日までに、各会派に対し、次の金額の政務調査費が交付されるに至っている。
@イレブンの会
  金1万円×10か月(翌3月までの分)×11人=金110万円
A伸政会
  同じく金1万円×10か月×8人=金80万円
B日本共産党
  同じく金1万円×10か月×4人=金40万円
C公明党
  同じく金1万円×10か月×2人=金20万円
  ちなみに、会派に所属しない議員(原告)に対する交付予定額は、
     金7000円×10か月=金7万円
  であるが、原告は交付申請をしていない。

第3 本件政務調査費交付の違法性
1 議員平等の原則に反する
  木津川市は普通地方公共団体であるところ、その議会の議員は、選挙によって選出された議員によって構成される(地方自治法17条)。そして、議会を構成する一人ひとりの議員は、会議体の一構成員として、各々が同一の権能を有しており、各々が独立して会議体としての議会の意思決定に関与することになる(地方自治法116条ほか)。つまり、地方議会議員は、議員としての経歴はもちろん、性別、年齢、教育、財産、社会的な地位、職業、所属政党、思想信条その他の如何に関わりなく議員として全て平等、対等であることを原則とする(議員平等の原則)。
  ところが、本件条例は、木津川市議会において何らかの会派に所属している議員に関し、「会派に所属している」という事実のみをもって、会派に所属しない議員よりも、優遇する内容となっている。具体的には、会派に所属している議員は、会派に所属していない議員よりも、月額金3000円多額の政務調査費の交付を受けることができる。
  本件条例に基づく以上のような取扱は、法の下における平等に関して定める憲法14条1項に反することはもちろん、会派に所属しない議員に対し投票を行った住民の民意をも制約するものとして憲法93条にも反する。
2 条例制定権の範囲を逸脱している
  地方自治法100条13、14項は、「会派又は議員に対し政務調査費を交付することができる」と規定しているが、これは、会派に所属している議員を不当に優遇することまで許容するものではない。
  本件条例は、法の定める枠組みを逸脱している。その意味で、本件条例に基づく政務調査費の交付は、地方自治法、及び条例制定権の限界について規定する憲法92条に反する。
3 したがって、本件条例のうち、会派に所属する議員に対し、「上積み」した政務調査費を支給できると定めている部分については、効力を有しない。
  その結果、会派に対して交付された政務調査費のうち上記の「上積み」部分については、法律上の原因を欠いたものというべきであり、不当利得にあたる。

第4 住民監査請求
  原告は、2007年5月14日、本件条例に基づく政務調査費の差額分の交付の差し止めを求めて住民監査請求を行った(甲1号証)。
  しかし、同請求については、同年6月21日付で棄却されている(甲2号証)。

第5 まとめ
  よって、原告は、被告木津川市長に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、本件条例に基づき、各会派に対して交付された政務調査費のうち、各会派毎の上積み支給分、具体的には、
    (1)イレブンの会        金33万円
    (2)伸政会           金24万円
    (3)日本共産党木津川市議員団  金12万円
    (4)公明党           金6万円
を木津川市に対して返還するように請求することを求めて、本訴訟の提起に及んだものである。
  以  上