木津川市職員措置請求書

木津川市の議会議員及び長の選挙公営費用の水増・過払い分の返還に関する住民監査請求書

木津川市長及び関係職員に関する措置請求の要旨

【1 請求の趣旨】


第1 概要
1 木津川市では、市長・市議会議員選挙の時の選挙ポスター代、選挙カーの借上料や燃料費・運転手の日当について、候補者側からの請求に基づき税金で負担する制度がある。選挙はがきの経費負担は義務的であるし、有権者に候補者の政策を周知するための「選挙公報の作成・頒布」の経費負担の意義は高く評価されている。
 しかし、ポスター代や選挙カーの燃料費・日当・車代などの公営には多様な議論がある。
 
2 木津川市長は、「『選挙公営』の趣旨は、お金のかからない選挙の実現と候補者間の選挙運動の機会均等を図るために制度化されたもの」としている。が、その理屈では、「『町村の選挙』では選挙カーやポスターなどの選挙公営を採用できない法制度である」という事実の説明がつかない。

3 選挙に立候補しても、適法かつ適正な政治活動、選挙運動をするなら立候補に必要な総費用は、さほどではない。お金のかからない選挙を実現することは候補者が努力すべきことであって、税金で負担することは、選挙費用を減らすことに逆行するだけである。選挙は、意志を持って立候補するのだから、経費は候補者が自分で出すべきで、贅沢なポスター代や選挙カー燃料費などを公費で認めようということは筋違いである。

4 過去に、ポスター代や燃料費の水増し請求が見つかり、刑事告訴に発展したり、議員辞職をした自治体もある。実際に、制度の趣旨に厳格に従って請求すれば、請求可能な金額は低いといわれる。現在の法制度で基準とされるポスター印刷単価は実態と合致しておらず、上限額を引き下げる自治体や条例自体を廃止した自治体もある。いまや、選挙公営は本来の制度の趣旨を逸脱して、単に候補者個人の高額な選挙費用一部補填制度である。

5 財政に余裕のある自治体はともかく、財政が厳しくなるからと合併した木津川市である。今後、水道料金の統一など住民の負担の増大が想定される木津川市にとって、「選挙に金がかかるから候補者の経費は税金で負担を」というのは不合理であり、市民の理解を得られない。候補者の費用を税金で負担するという制度は見直す必要がある。速やかに廃止すべき、もしくは、仮に、継続するとしても、ポスター印刷代等について真実の実勢価格を基準とする条例に改正すべきである。例えば、ポスターの紙質や印刷技術等も向上しているから、「ポスター作成・印刷の基準額が高すぎる」ことは明白なことであって、不正の余地を生じさせるものであり、不要・過剰な部分である。

6 請求人は、ポスター代や選挙カーの燃料費、借上料、運転手日当にかかる水増し等による相当額の市の損害の回復を候補者ら相手方らに求める措置の勧告とともに、木津川市長がポスター代や選挙カーの借上料等の水増しによる木津川市の損害の回復を怠ることは違法であることの認定と必要な措置の勧告を監査委員に求めるものである。


第2 木津川市の選挙公営制度と公費支出の状況
1 条例規定(第1号証)
 木津川市議会議員及び木津川市長の選挙運動の公費負担に関する条例(平成19年3月12日条例第11号。以下「本件条例」という。)の規定は以下である(関連部を抜粋)。

(趣旨)第1条 この条例は、公職選挙法第141条第8項、第142条第11項及び第143条第15項の規定に基づき、木津川市議会議員及び木津川市長の選挙における法第141条第1項の自動車の使用、法第142条第1項第6号のビラ(木津川市長の選挙の場合に限る。)の作成及び法第143条第1項第5号のポスターの作成の公費負担に関し必要な事項を定めるものとする。

(選挙運動用自動車の使用の公費負担)第2条 木津川市議会議員及び木津川市長の選挙における候補者は、64,500円に、その者につき法第86条の4第1項、第2項、第5項、第6項又は第8項の規定による候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日(投票を行わないこととなったときは、その事由が生じた日。)までの日数を乗じて得た金額の範囲内で、選挙運動用自動車を無料で使用することができる。ただし、当該候補者に係る供託物が法第93条第1項の規定により木津川市に帰属することとならない場合に限る。
(選挙運動用自動車の使用の契約締結の届出)第3条 前条の規定の適用を受けようとする者は、道路運送法第3条第1号ハに規定する一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者、その他の者との間において選挙運動用自動車の使用に関し有償契約を締結し、木津川市選挙管理委員会が定めるところにより、その旨を委員会に届け出なければならない。

(選挙運動用自動車の使用に係る公費の支払)第4条 
(1) 当該契約が一般乗用旅客自動車運送事業者との運送契約である場合 当該選挙運動用自動車(1台の選挙運動用自動車に限る。)のそれぞれにつき、選挙運動用自動車として使用された各日についてその使用に対し支払うべき金額(当該金額が64,500円を超える場合には、64,500円)の合計金額
(2) 当該契約が一般運送契約以外の契約である場合 次に掲げる区分に応じ、それぞれに定める金額
ア 当該契約が選挙運動用自動車の借入れ契約である場合 当該選挙運動用自動車(1台の選挙運動用自動車に限る。)のそれぞれにつき、選挙運動用自動車として使用された各日についてその使用に対し支払うべき金額(当該金額が15,300円を超える場合には、15,300円)の合計金額
イ 当該契約が選挙運動用自動車の燃料の供給に関する契約である場合 当該契約に基づき当該選挙運動用自動車に供給した燃料の代金(当該選挙運動用自動車が既に前条の届出に係る契約に基づき供給を受けた燃料の代金と合算して、7,350円に当該候補者につき法第86条の4第1項、第2項、第5項、第6項又は第8項の規定による候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日までの日数から前号の契約が締結されている日数を除いた日数を乗じて得た金額に達するまでの部分の金額であることにつき、委員会が定めるところにより、当該候補者からの申請に基づき、委員会が確認したものに限る。)
ウ 当該契約が選挙運動用自動車の運転手の雇用に関する契約である場合 当該選挙運動用自動車の運転手(同一の日において1人の運転手に限る。)のそれぞれにつき、選挙運動用自動車の運転業務に従事した各日についてその勤務に対し支払うべき報酬の額(当該報酬の額が12,500円を超える場合には、12,500円)の合計金額

(選挙運動用ポスターの作成の公費負担)第9条 候補者は、第11条に定めるところにより算定した選挙運動用ポスターの1枚当たりの作成単価に選挙運動用ポスターの作成枚数(当該作成枚数が、当該選挙が行われる区域におけるポスター掲示場の数に相当する数を超える場合には、当該相当する数)を乗じて得た金額の範囲内で、選挙運動用ポスターを無料で作成することができる。この場合においては、第2条ただし書の規定を準用する。

(選挙運動用ポスターの作成の契約締結の届出)第10条 前条の規定の適用を受けようとする者は、ポスターの作成を業とする者との間において選挙運動用ポスターの作成に関し有償契約を締結し、委員会が定めるところにより、その旨を委員会に届け出なければならない。

(選挙運動用ポスターの作成に係る公費の支払)第11条 木津川市は、候補者が同条の契約に基づき当該契約の相手方であるポスターの作成を業とする者に支払うべき金額のうち、当該契約に基づき作成された選挙運動用ポスターの1枚当たりの作成単価(当該作成単価が、510円48銭に当該選挙が行われる区域におけるポスター掲示場の数を乗じて得た金額に30万1,875円を加えた金額を当該選挙が行われる区域におけるポスター掲示場の数で除して得た金額を超える場合には、当該除して得た金額)に当該選挙運動用ポスターの作成枚数を乗じて得た金額を、第9条後段において準用する第2条ただし書に規定する要件に該当する場合に限り、当該ポスターの作成を業とする者からの請求に基づき、当該ポスターの作成を業とする者に対し支払う。


2 選挙公営の趣旨・目的と支出に関する手続き
 本件条例にかかる規定に基づき、候補者は、契約後直ちに自動車使用契約届出書(「一般運送事業者との契約」もしくは、それ以外の場合である「借上、燃料、運転手の契約」)、選挙運動用ポスターの作成契約届出書を市に提出。次に、自動車燃料代確認申請書、ポスター作成枚数確認申請書を市に提出し、市の確認を受けることとされる。
 そして、燃料費については、月日別の販売単価と販売量の内訳を記載した請求内訳書とともに請求書を提出、自動車の借上や運転手については、請求内訳書とともに請求書を提出することにより、市は、業者や運転手等に上限額の範囲内で支払う。
 このように、手続きが契約書や確認書の提出を厳格に定めていることからも、選挙公営の趣旨・目的は、真実に基づく請求を前提に候補者の負担を軽減しようとすることにあるのは明白である。第2条の「無料」とは、「上限いっぱいどうぞ」でなく、「上限の範囲で真実に要した費用を負担しましょう」という趣旨であることは明らか。

3 2007年の市議選の支出
 (1) 2007年4月の木津川市長・市議会議員選挙に関する公費負担は、次のようである。(第2号証)
  市長選は、3人が立候補し、没収による権利喪失者が1人である。市議選は、35人が立候補し、1候補はど  
の公営も請求しなかった。
 2007年8月末日時点の市の支払結果集計では、市長選は、選挙カー借上料(2候補/21万4200円)、運転手日当(2候補/17万5000円)、燃料費(2候補/2万2568円)、ポスター作成費(2候補/52万4384円)ビラ印刷(2候補/22万6240円)、市議選は、選挙カー借上料(28候補/295万5400円)、運転手日当(26候補/226万8000円)、燃料費(32候補/40万3499円)、ポスター作成費(33候補/1020万3859円)であり、本件条例に基づく公営の市費負担全体合計は1667万5367円であった。

(2)ポスター作成経費に係る支出(第3号証)
 2007年4月の木津川市議会議員選挙に関する選挙運動用ポスター作成に係る交付総額は、1020万3859円であり、このうち、13候補が基準額の90%以上の額を請求し、その合計額は約510万円であり、90%未満の額を請求した20候補の合計の額は約500万円である。
また、契約枚数を掲示場数であり公費負担の上限枚数209枚で契約している候補者が24人いる。このことは、破損や破れに対応できないことから、通常の契約枚数としては考えられない。また、209枚を超えて契約している候補者の内、選挙運動用収支報告書に私費負担分が計上されていない候補者が4人見られる。

(3)選挙カーに係る支出(第3号証)
2007年4月の市議選挙に関する選挙カー借上料に係る総額は、295万5400円(28候補)であり、上限額100%を請求した候補者が24人。このうち、選挙カー借上契約期間を選挙運動期間である7日間(4/15〜21)としている候補者は14人である。本来選挙運動期間のみ借上ることは考えられない。また、運動期間前から契約期間としている11候補についても、契約金額がそのまま交付額となっており、7日分を超えた借上料の交付がされていることになる。
運転手日当に係る総額は、226万8000円(26候補)であり、上限額100%を請求した候補者が24人。燃料費に係る総額は、40万3494円(32候補)であり、上限額の50%を超えた候補者が1人。また、候
補者の1人は、選挙期間をすぎた時点で給油した燃料費を請求し交付されている。 


第3 印刷業界の選挙用ポスター作成の実際の相場
1 本件選挙の請求額から導かれる印刷費の実勢額
 本件選挙における各地候補者のポスター代の請求額を比較すると、印刷業界の実勢価格が見事に現れてくる。

2 他の自治体の例
 栃木市議会では2001年3月議会で議員提案によって条例改正し、ポスター作成費の「企画料」30万1875万円を削った。理由は、ポスター作成費の水増しがばれて、議会全体が謝って、あいまいな「企画費」の部分を0にしたものである。
また、山県市議会では、2004年合併後初の選挙においてポスター代の水増し請求した事実が県警の捜査で認め、市議5人が辞職、その後、市の選挙公営の条例が廃止された。
日進市では、今5月16日にポスター代と選挙カーのレンタル料についての監査請求書が提出され、公費負担の上限額の見直しを検討すべきと付された監査結果が出ている。

 3 愛知県・木津川市の調査例
 愛知県豊明の見積調査例(ポスター掲示場数の135枚を制作する場合)
A社 印刷7万5000円+デザイン料2万5000円=10万円
B社 印刷6万7250円+デザイン料4万円=10万7250円(+撮影代3万円)
選挙用ポスター1枚あたりにすれば、A社740円、B社1016円である。
A社の営業マンは、「リーフレットやはがきの印刷代もポスターといっしょに請求してくれればいいと言われることが多い」とした。
 条例の基準額は、1枚2740円である。

木津川市の見積調査例(ポスター300枚を印刷する場合)
C社 ユポ紙21万円、アート紙17万円であった。選挙用ポスター1枚あたりにすれば、C社ユポ紙で700円、アート紙で566円である。(第4号証)

4 印刷業界は、ポスター作成費で「全部突っ込み」が通常
 三重県内の某自治体の選挙前、ある印刷業者が、「ポスター作成費に、ハガキやリーフレット、名刺など突っ込みで印刷しますから」という主旨を記載したチラシを配って営業活動をした。
 これが、都市部等の選挙グッズ印刷業者の相当な部分の実態である。

5 水増し部分を候補者にキックバック(現金で返す)する業者もいる。この点は、自動車や運転手でも同様である。ガソリン代については、選挙用自動車(1台に限定されている)以外の車のガソリンを請求する例もある。
 
6 請求人の例
 本件請求人の一人である呉羽真弓は、2007年木津川市議員選挙では、通販印刷を活用しポスター300枚を25700円、1枚90円程度で作った。

7 以上、実際のポスター作成費は、現在の条例基準額の5割程度で十分に作成できるというデータがそろってきているとえる。ポスター作成費の真実は、条例で基準額と設定される額の1/2程度とみるべきものである。


第4  本件における違法性もしくは著しい不当性
1 本件条例違反
 真実でない請求をしたことは、第2で述べたとおり本件条例(第2条、3条)に違背する。

2 地方自治法違反
 本件請求手続きが契約書を提出し、選挙管理委員会等が確認したうえで作成費を交付すると規定していることは、契約書が真実であることを前提にしているのは明白である。
 地方自治法第2条、「16項 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。」「17項 前項の規定に違反して行った地方公共団体の行為は、これを無効とする。」とされているところ、本件に妥当する。
真実に基づかない契約書によって生じた「過払い部分」は、市が負担する必要も根拠もない債務であるから違法な支出である。

3 仮に水増しなどの行為がない請求の場合でも、ポスター代50%を超える部分については通常相場と比較して著しく高いもので、かかる支出は地方自治法2条14項「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」に違反し、地方財政法第4条1項「必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない」に違反している。

4 ポスター代の契約枚数209である候補者24人は、契約枚数と掲示場の数が一致している。本来掲示場の数ちょうどを契約することは考えられない。209枚と契約することによって、1枚あたりの金額が高額となる。
また、限度額100%を請求している3候補の内、2人が209枚での契約者であり、上限額を意識した契約であるといえる。この3人の内、2人は同じ印刷所で契約しているが、選挙運動用収支報告書に選挙ハガキに関する費用がない。有権者に候補者の政策を周知する手法である選挙ハガキの活用がされたのか確認すべきである。他市などで問題となっているポスター印刷費へのハガキのつっこみ印刷の事例もあることから当然候補者に確認すべきである。いうまでもないことだが、選挙運動用収支報告書(以下「報告書」という)に虚偽の記載をした場合、公職選挙法246条により、3年以下の禁固または50万円以下の罰金の刑に処せられる。
 契約枚数が209枚を超える候補者の内、「報告書」に私費での負担の記載がない候補者が4人いる。本来209枚を超えた分は公費の対象にならないので、超えた分は、「報告書」に記載すべきである。私費の負担がない以上、公費に入れ込んで請求している可能性を否定できない。(第3号証)

5「選挙カーの契約について」
 候補者もしくは家族の自家用等の車を公費で負担することは、違法であるし、あるいは当該借入れ契約の場合の貸し出し業者の通常の標準価格を超える場合、あるいは真実の賃貸料に反して上乗せされている場合、または、いわゆる選挙カー用看板枠あるいは音響設備を含んでいる場合、それらの真実を超える部分は、いずれも条例に違背する水増し請求である。
 本件市議選において、選挙期間の7日間を契約期間としている者が14候補いる。選挙カーという性格である以上、契約期間が7日間ですむはずはない。契約期間と契約金額の真実性を疑う。
 また、選挙期間を超えて契約期間を結んでいる候補者の内、10候補者については、7日間を超えての契約金額そのままを公費で負担している。7日分を超えた選挙カーの借上料を公費で負担することは、条例に反している。
 また、1候補者については、自身が経営する会社が所有する車を使用しており、代表者である候補者本人へ公費が支払われている。法人であっても、候補者本人が代表である以上、公費負担をすることは不適切である。
 また、大手レンタカーで賃貸されている自動車で軽自動車も普通自動車も同額の上限額が交付されていることは、選挙公営の上限額を意識した請求であり、不適切である。(第3号証)


6「運転手日当」について
 運転手日当にかかるどの候補の請求も、運転手は一人から数人である。
 しかし、選挙運動において選挙カーをたった一人で1日12時間、もしくは1日の大部分を運転することは不可能である。しかも7日間の選挙期間を一人から数人で動かすことも不可能である。
 他方、何人も交替して運転する当番スケジュールを組んで選挙カーを回す場合、そのうちの特定の一人から数人にだけ「日当」を支給するということも、選挙運動の実務上も極めて困難なことである。そのようなことをしたら、候補者や選挙運動中枢部の公平観が問われるからである。
 本件において、真実の運転労働を担った者に対してでない場合は、当然違法である。結論として、請求に基づき交付された全額が当該名宛人運転手に全額が最終的に収納されていない場合や、回りまわって候補者の選挙運動費用等にキックバックされる場合も違法である。ちなみに、木津川市議選において、公費が支払われている候補者の選挙カーの運転手をされていた方で運転手日当について何ら候補者から呈示がないとのことである。実際に運転手に支払われているか疑わしい。
 また、「報告書」に運転手の日当7日分を無償労務提供として報告している1候補者がいるが、運転手日当を上限額100%請求し、支払われている。整合性がとれていない報告であり請求である。運転手に支払われているか疑わしい。(第3号証)


7「燃料費について」
選挙カー1台分・選挙期間の7日間での請求しかできない。1人の候補者は、選挙期間の終了後に返還するための給油を請求しており、この際の27.72?分は不適切な支出である。また軽自動車を使用した2候補者で燃料タンクの容量を超える給油量となっている。通常給油した際に、渡される明細書が添付されていないため、チェックできない。業者の請求書・領収書などを確認すべきである。(第3号証)



第5 社会通念との著しい相反
1 信義則違反
 本件請求手続きが契約書を提出し、選挙管理委員会等が確認したうえで作成費を交付すると規定していることは、契約書が真実であることを前提にしているのは明白である。
 候補者らが意図的に真実に基づかない契約書を作成し、過剰な請求をしたことは、信義則違反である。

2 議員の責務についての社会的な認識
(1) 私生活のことなら「趣味」「嗜好」の選択は自由としても、選挙経費を税金で負担することについて、「贅沢を容認」する姿勢は市民には受け入れがたい。
 組織などに頼らず低額な経費で選挙をする人たちにとって、公費負担の金額は意義が高いとの意見もあるが、総額を切り詰めた選挙なのであるから、ポスターの低額化など従来の公費負担部分や諸費のさらなる経費削減は可能である。
(2) 議員等になろうとする候補者が、制度があるからと贅沢を求めることは、いまや許されない時代であ
る。自ら税金を贅沢に浪費する政治家に、公務員や役所に「コスト」「効率性」などを求めることはできないはずである。


第6 木津川市の損害と監査委員に求める措置
1 初の木津川市議選挙において、初めて適用された制度である。候補者は、自らの選挙に対して、まず持って制度の趣旨を十分認識し、かつ税金で負担されることの意味を意識した上で、制度を使用すべきである。「過払い分のすべて」について木津川市の損害を回復するべく、住民監査請求することは納税者かつ有権者としての市民の願いである。

2 市長は、本年6月議会において、「選挙公営制度を十分に研究しながら適正な制度の運用に努めてまいりたい」と述べている。添付資料の不備などもあることから指摘したことに対しての答弁であり、支出に対しての検証をする意思があることを確認できる。

3 各地の例からしても、本件の状況からしても、水増しの疑いは相当の確実性の高いことが誰にでも認識される事態であるから、監査委員も十分に本件住民監査請求で指摘する違法性は認識できる。監査委員には、地方自治法第242条の定めにしたがって、本件請求の指摘を受けて、独自に、2007年市議選にかかる不正請求の有無とその額を調査・確定することを求める。
 なお、市議選出の監査委員は除斥対象であることは疑いない。外部監査を求める。

4 相手方である候補者及び対応する業者や運転手に水増しあるいは虚偽請求による不当利得部分の返還を勧告することを監査委員に求める。
不当に過大請求していることで市の損害の発生は明らかであり、この損害の回復を怠ることは真正怠る事実として2007年分の損害につき住民監査請求期間の制限はない。

   
第7 本件に期間徒過はない
1 真正怠る事実であるから住民監査請求の期間制限の適用はない

(1)本件は真正怠る事実である。
 候補者と業者が談合して市に不正請求したことによる過払というべき事態を放置すること、つまり不法行為に基づく木津川市の損害の回復を怠ることは違法であり、その点に関する住民監査請求に「支出から1年に住民監査請求すべき」との期間制限は適用されない。

(2)「法242条1項は財務会計上の行為については、1年を経過したときは監査請求をすることができないものと規定し、怠る事実についてはこのような期間制限は規定されておらず、住民は怠る事実が現に存する限りいつでも監査請求をすることができる・・・そして、監査請求の対象として何を取り上げるかは、基本的には請求をする住民の選択に係るものであるが、具体的な監査請求の対象は・・・請求書の記載内容、添付書面等に照らして客観的、実質的に判断すべきものである。・・」(最高裁判所第3小法廷平成14年7月2日判決)